『アンネの日記』を読んで

まさかこの歳になって読書感想文なるものを書こうとは。

本を読んだ感想なんて、最後に書いたのはいつだっただろう。

と思い返していると、おそらくあれは小学6年生の秋のことだったと思う。(ちょうど四半世紀前ということになる)

読書は当時、退屈ながらも嫌いではなかったから教室にある伝記くらいは読んでいましたが、いざ内容を書こうとなると退屈に退屈を足してそしてさらにそれに退屈を掛けたくらい退屈だったから、著者や訳者のまえがきやあとがきを書き直して提出していたりしたものです。

もちろん今でも親友の、例の『i柿』さんと共謀して。

さてそんなわけで、本題に戻ることにいたしましょう。

アンネの日記は誰でも知っているタイトルですが、実はこの日記には、原本版と清書版の2種類が存在している。

この日記が書かれたのは1942年6月12日(アンネの13歳の誕生日)〜 1944年8月1のおよそ2年の間ですが、

1944年ある春の日のラジオ放送での 、

”この特殊な状況下での執筆物は戦後貴重な公開資料となる”

という声明を機に、アンネは原本版の写しを始めます。(そして生まれたのが清書版ですが、原本版を綺麗に書き写した後、追記としてより詳しい内容を書き足している。)

隠遁生活を始めたのが日記を書き始めてひと月後の1944年7月のことですから、日記の内容はほぼ隠れ家生活でのことを記していますが、日記の初期に散見された、同級生や同年代の男女をディスる内容には少なからず笑いを我慢しなければならない場面もいくつかあった笑

アンネって結構毒舌だな、と彼女に対し親近感を覚えたわけですが、内容が進むにつれ、自体はじわじわと深刻になっていきます。

度々侵入してくる泥棒、他者にバレる隠れ家生活、オランダ警察の存在、協力者の病気や逮捕 etc

とはいえ、全体を通して書かれている内容はアンネの個人的な悩みや葛藤、家族内での揉め事や不和などがほとんどを占めており、10代の女の子特有の物思いに触れることが出来るとても興味深い一冊となっています。

恋や性の描写なども含まれており、特に自分自身を分析したような記述は本当に15歳の女の子が書いたのかと見まごうほどである。

日本語翻訳の過程で、言葉のチョイスが若干形式的になっていることもその理由の一つなのかもしれませんが、言いたいことは時折非常に哲学的で、科学的で、慈善に満ちたモラリストといった印象を与えることも多々ある。

500数ページにびっしり書かれた内容には、付箋をした箇所も何箇所もあり、10代の女の子から学ぶことが非常に多かったということを白状しなければなりません。

同年代の男の子とのやりとりなども何箇所かで描写されていますが、アンネの方が大人びていて姉のマルゴーとはまたちょっと違った形で成熟した女の子だということが読んでお分かりになることと思います。

さて、今更ながらアンネの日記。

当然ながら僕もその存在は知っていたしなんなら家の本棚にもあった気がするのですが、、

表紙にもなっている彼女の笑顔がなんとなく怖かったのと戦争と直接関係のある時代背景ということもあり、どこか手に取ることを敬遠してみました。

ですがこの度、どういうわけか、アンネの日記を読んでみようと思い立つにいたり、じっくりコトコト隅々まで精読してみたのですが、

いやぁ、読んで良かった。

なかなかの良書であると言えるでしょう。

良書であるどころか、当時の生活スタイルや、常識、考え方、戦況、10代の女の子特に外国の女の子が何を考えているか、などなど得るものが非常に多い一冊だったと言えます。

とても優良な資料になっているはずだ。

とはいえ、

全体的に見ると悲しい状況下で書かれた悲しいテーマであるため、本の終わりに近づけば近づくだけページをめくればめくるだけ、そわそわと居た堪れない感情が湧き上がってくるのもまた事実。

フィックションであれノンフィクションであれ、主人公や物語の終わりはある意味はっきりと記されるか、またはそれ自体がなくこのまま続いていくのかなと匂わせる場合がほとんですが、アンネの日記の場合、1944年8月1日より後の続きがないことが全てを物語っており、

連合国軍の上陸作戦やシュタウフェンベルグの一件について大きな期待や将来への希望をありありと綴っていただけに、終わり方の落差に読者としては胸を痛めるほかない。

アンネの内なる心境や未来への期待や希望は日記終盤になっての快活さや文字の記述量に現れており、彼女自身終戦後にジャーナリストや執筆家として活動することを夢想していたはずで、

密閉された狭い空間で、2年余り我慢し暮らした隠遁生活が密告者によってあっけなく終わった事実と、これまで読み進めた日記の内容とを照らし合わせると彼女やその家族が不憫でしょうがない。

このような悲惨な状況下でありながら文字通り強く逞しく生きた証を日記として残していたアンネは日記内で以下のように記しています。

「死んでからもなお生き続けたい」

「世のため人のために生きたい」

と。

そう願った彼女の望みはしっかりと叶えられており世界中の人々の中でアンネはずっと生き続けている。世界の平和に彼女の存在や日記が大きく役立てられていることは間違いありませんし、一介の画家である僕もこうして大きなインパクトを与えられました。

アンネフランクは非常に観察力に優れた賢いティーンエイジャーであり、負けん気や根気も人一倍強かった大人びた女の子でありました。

もしあのまま生きて終戦を迎えていても世の中をより良い方向に導く大きな温かい存在になっていたことは疑いようがないでしょう。

ではまた。

シェアして下さるんですか?
今エアハグを差し上げました。




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